ソルがいなくなった。正確に言えば僕と些細な事での口論の後、家を飛び出しそのまま行方不明だけど。どれにしろ僕の前からソルがいなくなった、と言う事には変わりない。
実際は部屋に閉じこもって出てこなかったので僕もそんなに気にせずに1時間後に夕飯で呼びに行って空っぽの部屋を目撃する羽目になったわけで。今更そんなこととやかく言っても始まらない。夕飯は冷めてしまうし最悪だ。ただでさえ口論で無駄に体力を使ってしまってお腹が空いていると言うのに。
…ソルだって、お腹を空かせているに違いない。でもソルのことだから、きっと意地になって帰って来れないだけだろう。
ああ、そろそろ迎えに行こう。ソルの居場所なんてすぐわかる。僕はそれほどバカじゃない。
ホラ居た。呆気ないくらいに簡単に見つかる。
でも、寝てる。
暗い公園のベンチに座って気持ちよさそうに眠るソルを目の前に、僕は溜息を吐くより他にない。全く、これだから君は。
困ったな。夕飯は完全に冷えちゃった。
起こせずに隣に腰掛けると自分の上着をソルの肩にかけて、僕はやっぱり溜息を吐いた。
お腹空いたなぁ。
さすがに反省したのかソルは黙って僕の後をついて歩く。帰ったら夕飯はレンジでチンだ。情緒が無くて嫌いだけど。
味噌汁は温めなおそう。ご飯はどうしようか。今日は天婦羅だったんだけど。衣に油が染みてると嫌だなぁ。
デザートは何だろう。何かあっただろうか。
考え事をする僕の服の後ろをソルがきゅっと掴むのに振り返る。口をきかない僕は怒っているように思えるのだろうか。初めから家出なんてしなければ良かったのに。ああ、それなら最初に喧嘩なんてしなければ良かったんだね。ごめんね。
帰ったら夕飯を食べて、それからデザートは。